「さよならアナログ放送」  この日とうとうアナログ放送が終わる。この日を境い目にテレビ画面は砂嵐しか写さないという現実を僕は受け止めることができるのだろうか?この耐え難い現実をひとりで過ごさないために、みんなとテレビが砂嵐になる瞬間を見たいと思った。いわば、アナログ放送のお葬式である。(藤幡正樹)
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場所:KINOHAUS 1階 (映画美学校)
   東京都渋谷区円山町1‐5
時間:7月24日(日) 夜9時会場、9時半から12時まで
トーク:出演:藤幡正樹、金平茂紀、吉見俊哉
作品上映・展示:竹内均、藤幡正樹、小町谷圭
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1)作品展示:"Private Room / TV" :藤幡正樹+川嶋岳史 カフェ前において8時頃から展示。
蛍光灯一本がテレビの1ピクセルに対応する大きな超低解像度テレビ。椅子や壁や家そのものが記憶している家族の団欒とテレビの明滅が今ここに再現されるインスタレーション作品。
2009年、お茶の水文化学院での展示風景
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2)トーク:10時から12時まで 出演:藤幡正樹、金平茂紀、吉見俊哉
会場に3〜40台のアナログテレビ受像器を並べ、深夜12時にすべての画面が砂嵐になるのを待ちながらトークを行います。
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概要:
 アナログ地上波から地上波デジタルへの交代は誰が決めたのか?完全に送り手側によってのみ組み立てられた論理なのではないのか?技術革新と経済市場の活性化のための論理で進められた今回の世代交代では、受け手の論理はほぼ完全に忘却されている。テレビが育成してきたものは、技術と市場だけではない。家族の関係性からはじまって、社会との新しい接点も用意してきた。歴史的には、テレビにおける公共性のあり方が幾度も議論されてきたが、それらは個人の思想を紡ぐメディアへの形成には至らず、結局は大本営発表と大差のないメディアとしてしか発展してこなかった。つまり、テレビは市民社会の育成にはつながらなかったのだ。このことは、3.11における放送報道のありかたによってみごとに露呈した。結局のところ、テレビは停波以前の段階で、実はとっくの昔に終わっていたのではないのか?
 現状において、アナログ放送自身が自身の総括を行う兆しの見えない時、ささやかながらここに議論の窓口を作ってみたいと考える。
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金平茂紀:1953年生まれ。1977年TBS入社。 社会部、「ニュースコープ」副編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、ニュース23編集長を務め、2005年から報道局長、2008年からはアメリカ総局長として、アメリカを中心に取材を続ける。 2004年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。
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藤幡正樹:1956年東京生まれ。メディアアーティスト、東京芸術大学大学院映像研究科教授。メディアアートの世界で、80年代からさまざまな活動を展開している。近年は、GPSを用いて北アイルランドで制作された作品「Simultaneous Echoes」で注目を集める。
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吉見俊哉:1957年東京生まれ。日本の社会学者。東京大学大学院情報学環教授、学環長(2008年度まで)。2009年6月から財団法人東京大学新聞社理事長。専門は都市論、文化社会学(カルチュラル・スタディーズ)。「都市のドラマツルギー」をはじめとして著書多数。
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当日昼の12時に番組は終ります。電波は24時までに停波しなくてはなりませんが、それが24時まで続いているのかどうかは、局の方針によって違うようです。NHKの方針

トークに当たって以下の作品を上映します。
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"hope house" (日本/2011/日本語/カラー/ビデオ/20分)
監督・撮影・編集:竹内均 音楽:ウラジーミル・マルティノフ
制作協力:特定非営利法人 きぼうのいえ、セカンドハーベスト・ジャパン
東京タワーの鉄塔建設に従事し、現在、建設中である東京スカイツリーが屋上から見えるホスピス「きぼうのいえ」に入居している佐藤安正さん(93)を追ったドキュメンタリー。
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竹内均:1985年東京生まれ。東京芸術大学美術学部生。近年はドキュメンタリーを中心に映像制作の活動を行っている。作品は「インターバル」(2009)、「hope house」(2011)、「citizen(仮)」(編集作業中)など。映画/映像と社会とのあるべき関係を分析、考察し制作を行っている。
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3)エンディング:「エンドレスTV」:小町谷圭
アナログ放送が停波となり、ついに無用の空き箱となったテレビセットは、今霊柩車に載せられて去ってゆく。アナログ放送の出棺である。詳細は現在秘密。
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小町谷圭:1977年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。大学で油画を専攻した後、電子メディアを使用した作品制作を展開している。また、コミュニティ・メディアをテーマにしたプロジェクト《FM Crossword》や、表現に関わる様々な人々の テクノロジーやメディアに対するアプローチをアーカイヴするプロジェクト《Lib-LIVE!》などがある。
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