Masaki Fujihata + Yuji Dogane An Experimental Robot for Mobile Orchid.
for "Robot_Meme" exhibition, at National Museum of Emerging Science and Innovation.
「ロボット・ミーム」展日本科学未来館
2001年12月1日から2002年2月11日まで


オーキソイド "Orchisoid" 2001
藤幡正樹(東京芸術大学美術学部教授/メディア・アーティスト)
銅金裕司(バイオ・メディア・アーティスト/Ph.D.)

製作:カワシマ・ラボ
協力:ランダムエレクトロニクスデザイン

「蘭」の測定結果のページ

オーキソイドは、完成されることのないプロジェクトです。植物の情報を計測して
いるとそれがいかに環境の影響を受けているかがわかってきます。ここ日本科学未
来館へ蘭を移動しただけで、すでにラボでの状態とはかなり異なったデータが出て
きてしまいます。ここへやってきたあなたの存在もなんらかの形で蘭のあり方に影
響を与えていることは確かです。蘭をコンピュータや機械との関係だけで見ること
も危険かもしれません。そういう意味では、私たちは、すでに蘭のミームに振り回
されているのかも知れません。このプロジェクトでは蘭が移動したときに、蘭がど
う返事をしてくれるかを調べます。これは永遠の私たちの疑問とも言える「(一見
)どうして動物は動いて、植物はじっとしているか?」という問いへのアプローチ
にもなるかもしれません。



1)なぜ、植物の中でも「蘭」を選んだか。

蘭は、現在でも日々、新種が見つかるほどに、変化の激しい植物です。さらに蘭に
魅せられた人間たちによって、人工的な交配もされています。実際に、植物の中で
、もっとも長い遺伝子をもったものが「蘭」の種類の中にはあるのです。このこと
はいかに多様な環境に適してきたかを示し、この展示でもいろんな種類の蘭を集め
ています。さらにマイクロボルトレベルの電位変化をみてゆくと、30Hz〜50
Hzという高い周波数でも変化が見られる植物はそれほどなく、こうした実験に適
した植物で、きっと、私たちの期待に答えてくれるでしょう。

2)マイクロボルト電位計について

人体の脳波を計る機器を改造して使用しています。0Hzから50HZあたりまで
の変化を採取して、コンピュータでどんなリズムがあるかを(フーリエ変換して)
調べています。一般に植物が出す電位変化は2、3Hzをピークに、なだらかに
減衰して行くものですが、例えば、夜間に二酸化炭素の吸収が始まるなど、活動が
活性化すると10、20Hzあたりまでの波が出るようになるのです。人間で言え
ば、静かな状態(例えば目を閉じるなど)では、アルファ波(8〜13Hz以下の
波)が出ていますが、普段の起きている状態では、ベータ波(13Hz〜40Hz)
が盛んに出るのと同様であると思われます。この辺は、まだまだ未開発な分野であり、
今後の研究が期待されています。例えば、地震の予測などに使えないかと研究してい
る研究者もいます。

3)植物にモビリティーを与える。

植物を動かすと直接的には、振動などによって物理的な形状の変化がおこります。
それと同時に、位置が移動しますから、磁場、電磁波、光といった環境が変化しま
す。まず、これらの変化を見極めるために定常状態を計測し、それと動いた状態と
の差分を観察することから始めることにしました。再現性のある、特定の動きに対
する反応があれば、それを使って、蘭が好きな方向へ動かしてあげようというのが
この実験の目的です。

4)この作品における「ロボットと植物の関係性」

第一に、ここでは蘭から得た情報に適当な解釈を与えて、動かすのではなく、蘭に
移動能力を付加して蘭からの返事を調べることが目的です。植物を脳波計を付けて
、それをセンサーとして使うのではなく、こちらが与えた動きに対してのレスポン
スを知る方法として脳波計を使っているのです。まずは、ここにあるような、さま
ざまな(約50種)の「蘭」を順次調べて行きます。次第にさまざまなことがわか
るでしょう。


30th of Nov.2001